【心電図】分かる!2:1 Ⅱ度房室ブロックの心電図

心電図基礎講座
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さて、房室ブロックの講義もたまってきました。
今回からⅡ度房室ブロックの細かいトピックについてやっていきましょう。
いろいろ面白い内容があるのですが、まずは基本的なものから

症例:72歳 男性 入院時の検査

本日もあなたの働く病棟に新しい患者さんが入院してきました。入院時の心電図がおかしいと看護師さんから相談されました。以下に心電図を示します。

まず全体を眺めてみましょう。かなり徐脈でRR間隔が広がっています。P波との関係をみるためにⅡ誘導を拡大してみましょう。

よく見るとP波は定期的にありそうです。でも、P波の後に1回QRS波が続くと、次のP波の後はQRS波が欠落しています。PR間隔の延長は分かりません。
これは何の心電図なのでしょうか?

これは2:1 Ⅱ度房室ブロック、不完全右脚ブロックの心電図でした。
それでは、心電図の特徴についてまとめていきましょう。

2:1 Ⅱ度房室ブロックの心電図の特徴

今回の心電図のように1回P波とQRS波が続いて、次のP波の後にQRS波が欠落する心電図を2:1 Ⅱ度房室ブロックと言います。ブロックの比率はP波:QRS波は、3:1、4:1などがあり、3:1以上だと高度Ⅱ度房室ブロックと言います。
パッと見て「あれ?完全房室ブロックかな?」って思ってしまう人もいると思います。
このため、完全房室ブロックの心電図も示しておきましょう。

こちらが完全房室ブロックの心電図になります。P波は定期的にありますが、QRS波との連続性がありません。また、Ⅱ度房室ブロックではQRS波が欠落するときがありますが、完全房室ブロックでは遅いもののQRS波が一定にあります。

房室ブロックのタイプは?

さて、何で2:1 Ⅱ度房室ブロックが問題になるのでしょうか?
今まで読んできた方は分かると思いますが、Ⅱ度房室ブロックは「Mobitz Ⅱ型」か「Wenckebach型」に分かれるのでしたね。この二つの鑑別が重要な理由は、障害される部位が違うため、予後が異なるからでした。Ⅱ度房室ブロックではP波とQRS波が最低2回つながる部分がないと、この両者を鑑別することはできません。この辺りは前回の講義を見直してみてください。
さて、この2:1 Ⅱ度房室ブロックを鑑別する方法はあるのでしょうか?
Morbitz Ⅱ型房室ブロック型の場合には、全体の75%程度で幅の広いQRS波が認められます。このため、2:1 Ⅱ度房室ブロックで幅の広いQRS波であった場合には、Morbitz Ⅱ型の房室ブロックかもしれません。一方で幅の狭いQRS波が続く場合にはウェンケバッハ型房室ブロックなのかもしれません。しかし、元々、左脚ブロックがあった人がウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックになった場合もQRS波の幅が広くなるので、決め手にはなりませんね。

他の方法はあるのでしょうか?Mobitz Ⅱ型Ⅱ度房室ブロックとウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックでは、アトロピン投与による反応が異なります。Mobitz Ⅱ型Ⅱ度房室ブロックでは、元々His束以下に障害されている部位があり、電線が切れかかっている状態でしたね。このため、アトロピン投与や運動負荷により頻脈にすると、3:1や4:1となり完全房室ブロックなど高度なブロックになります。一方、ウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックでは、アトロピン投与により迷走神経の働きが弱まるため、P波とQRS波のつながり方が正常に戻ったりします。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/4/1/4_3/_pdf

というように鑑別は非常に難しいですね。
しかし、2:1Ⅱ度房室ブロックはペースメーカー等の処置が必要になるのか検討するために鑑別する必要があります。

ということで、今回の講義はどうだったでしょうか?
トピックとしては小さなものですが、考えていくと非常に興味深いですね。
それでは、次回の講義も楽しみにしておいてください。

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