【心電図】分かる!Ⅱ度房室ブロックの鑑別方法

心電図基礎講座
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今回もⅡ度房室ブロックの講義を続けていきましょう。
本来なら、もう少し飛ばして、完全房室ブロックとかの項目に行こうかとも思ったんですけど、このサイトでは心電図の教科書を作ることを目標にしているのでこういう細かいトピックも大切かなと思います。

Ⅱ度房室ブロックには、モービッツⅡ型とウェンケバッハ型の房室ブロックがありました。鑑別する方法は「PR間隔を見る」のですが、それだけだと実は迷ってしまったりすることがあると思います。今回は少しマニアックですが、モービッツⅡ型とウェンケバッハ型のⅡ度房室ブロックを比較して、どちらも理解できるようにしましょう。

まずは心電図紹介

こちらはモービッツⅡ型の心電図です。

こちらはウェンケバッハ型のⅡ度房室ブロックの心電図です。こうして並べてみると、あまり大きな違いがなさそうに見えてしまいますね。この2つの心電図を用いて特徴を比較していきましょう。

モービッツⅡ型とウェンケバッハ型の共通している特徴

左右に心電図を並べてみました。似ている特徴をまとめていきましょう。

P波とQRS波の『かたまり』の後に『空白』が続く

まず目に付くのは、P波とQRS波の『かたまり』とその後に空白(『ない』)が来ます。例えば同じ房室ブロックの完全房室ブロックでは、このP波とQRS波のかたまりと、その後の空白のようなパターンはないですね。定期的に『かたまり』と空白を繰り返すのは共通した特徴です。

『かたまり』の前後に必ず『P波』がやってくる

Ⅱ誘導のみ拡大してみました。拡大すると分かるのですが、P波とQRS波のかたまりの前後には、必ずP波が存在します。

P波が定期的にある

モービッツⅡ型Ⅱ度房室ブロックもウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックも房室結節より上には障害はありませんでした。このため、定期的にP波が確認できます。

モービッツⅡ型とウェンケバッハ型の違うところ

では、この二つの心電図を用いて違うところについてやっていきましょう。

PR間隔が延長する

モービッツⅡ型Ⅱ度房室ブロックではPR間隔は延長しませんが、ウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックではPR間隔が延長します。延長といってもなかなか判断が難しいのですが、そんな時はQRS波が『ない』部分に注目してみてください。ウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックでは、この空白の部分の前後でPR間隔が延長が最大化します。一方、モービッツⅡ型では、空白部分の前後でもPR間隔は変わりません。

モービッツⅡ型ではRR間隔が一定

PR間隔のみならず、RR間隔にも注目してみましょう。
モービッツⅡ型では上の心電図でみて分かるようにRR間隔が一定です。しかし、ウェンケバッハ型ではPR間隔が延長していくので、RR間隔が徐々に狭くなります。

障害されている部位がことなる

心電図から少し離れて次は障害されている部位についてまとめてみましょう。
ウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックでは、ヒス束が迷走神経刺激や薬剤により可逆的な障害を受けて、電気刺激を伝えていく過程でだんだん疲れてきて、房室ブロックを起こしてしまうのでしたね。このため、ウェンケバッハ型は完全房室ブロックにはなりません。
一方、モービッツⅡ型ではもともと左脚ブロックや2枝ブロックがあるところに残りの電気の通り道が切れかけていてサルコイドーシスや前壁梗塞などの不可逆的な障害で房室ブロックになるのでした。このため、予後が悪く、完全房室ブロックなるリスクがあります。

予後の違い

ウェンケバッハ型は基本的は予後は良好で、通常は経過観察で良いです。一方、モービッツⅡ型では完全房室ブロックや高度な徐脈になったりするリスクがあり、入念な経過観察が必要で、失神や心不全などの症状が出てきたときにはペースメーカー等の処置が必要になることがあります。

原因の違い

どちらも同じⅡ度房室ブロックですが、原因がだいぶ異なります。ウェンケバッハ型では例えば睡眠中に若者でみられることもあり、迷走神経刺激など可逆的な障害で起こります。下壁梗塞でもウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックが起こりますが、一般的には一過性で恒久的なペースメーカー等は必要ありません。一方、モービッツⅡ型では前壁中隔梗塞やサルコイドーシスなど不可逆的な障害でおこり、ペースメーカー等の処置を必要とする場合があります。

ということで、心電図所見のみならず、病態も含めてウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックとモービッツⅡ型Ⅱ度房室ブロックを比較してみました。
この二つを覚えにくいなと感じている方は、こちらをよく復習してみてください。

では、また!

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