四肢誘導の電気の流れ

心電図基礎講座
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こんにちは、福井大学の川野です。
今回は四肢誘導を見て、どんなように心臓に電気が流れているのか分かるようになりましょう。この講義が、今後の「心電図の軸」や「心筋梗塞の時の障害部位」などを理解する土台になるので、頑張って理解するようにしてください。

四肢誘導の電気の流れとは?

前の講義で、「心電図は電気の流れを示している」と言っていると思いますが、「電気の流れって、どうやって分かるんだ?」って疑問に思いませんか?

四肢誘導の電極の付け方の復習

復習ですが、四肢誘導では上の図のように電極がつけられています。右手、左手の誘導は区別されるのですが、足の誘導はまとめて下から心臓を見ていると大まかにとれらえておいてください。

心電図が示す”電気の流れ”のイメージ

まずは”電気の流れ”についてイメージを持てるようにしましょう。上の図で示すようにⅠ誘導は左手側に立って、右手側から電子が向かってくる様子を観察しています。

【注意点】
よくこの講義でも「電気の流れを見る」って言っていますが、実際に流れているのは電子(電気の小さな粒)で、しかもマイナスからプラスへ流れるんですね(いわゆる電気の流れとは逆)。物理学に詳しい人は分かると思うのですが、普通は「電子と電気は逆に流れるから、っていうと?」と混乱してしまいそうですよね。なので、今回の講義は心電図で「電子」が流れる様子をとらえることについて書いているので、電子という言葉を使っていますが、頭の中で「電子=電気」って変換しても良いと思います。実際にこの解釈は間違っていますが、医療者として現場で働く上では十分だと思います。

心電図上では、見ている側に電子が近づいてくる時(上の図なら、右肩から左肩へ)は基線より上の部分に波形が記録されます。逆に見ている側から離れていく時(上の図なら、左肩から右肩へ)は基線より下の部分に波形が記録されます。

電気の流れ方の具体例

では、上の心電図を使って具体的に考えてみましょう。まず、上のⅠ誘導でP波は陽性(基線より上)ですよね。そうすると電子は右肩から左肩の観察している側に向かってくることを示しています。

P波の次のR波は基線より上ですよね。このため、R波は電子が右肩から左肩へ観察者のほうに向かってくることを示しています。

R波に続くS波は上の心電図では基線より下になっています。そうすると、S波では、電子が右肩から左肩へ観察者から離れる方向に進んでいることが分かります。

最後にT波は基線より上にあるため、T波では電子が右肩から左肩へ観察者に近づくように進んでいることが分かります。

まとめると、
P波: こっち来るんかい
R波: こっち来るんかい
S波: え、来ないんかい
T波: やっぱ来るんかい
というような、吉本新喜劇を観ているような電子の流れの方向をⅠ誘導から読み取ることが出来ます。
ちなみに吉本新喜劇って、最高に面白いですよね。僕は学生時代は「単純だなぁ」って思って、面白さに気が付きませんでした。でも、今みるとギャグがいちいち面白いし、内容も分かりやすい。誰が観てもOKな内容になっているし、芸人さんの芸の完成度も高い。あんな、楽しいコンテンツを作るなんて本当にすごいな。このHPでも「吉本新喜劇」的な誰から見ても楽しい講義を目指そうと思います。

四肢誘導の電気の流れ

Ⅰ誘導は左肩に立って、右肩から左肩に電子が流れてくる様子を見ていると説明しました。Ⅱ誘導は下に立って、右肩から下に流れてくる電子の流れを見ています。また、Ⅲ誘導は下に立って、左肩から下に流れてくる電子の流れを見ています
この、Ⅰ誘導、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導は、ちょうど正三角形を逆さにしたような関係(上の図)になっています。

次に、aVR、aVL、aVFですが、これらの誘導はそれぞれ心臓から、右肩、左肩、下に流れてくる電子の流れを見ています。上の図のようにそれぞれの誘導は120°でちょうど円を3等分にする形になっています。

それでは、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ誘導と、aVR、aVL、aVF誘導をまとめて一つの図で表してみましょう。上の図のようになります。
この図をよく覚えておいてください。各誘導が心臓のどの部分を示しているのか分かります。Ⅲ、aVF、Ⅱ誘導は左心室の下壁(心臓の下側)の部分を表している誘導です。Ⅰ、aVL誘導は左心室の側壁(心臓の左側の壁)を観察しています。一方、aVRは右室流出路や心室中隔基部(心臓の右上)を観察できます。
この辺りは次の心電図の軸の話や心筋梗塞の時の「どこが障害されているのか」判断するのに重要になってきます。

練習問題

さて、最後に練習問題です。
aVR誘導で、電子の動きはどうなっているのか、みてみましょう。
aVR誘導は、右肩に立って、心臓から右肩の方向に来る電子の動きを見ています。
①P波:基線より下なので、右肩から遠ざかっていく
②S波:基線より下なので、右肩から遠ざかっていく
③T波:基線より下なので、やっぱり遠ざかっていく。
こんな流れが分かると思います。
そもそも、右肩から心臓を見る時、洞房結節から流れる電気信号は左心室へ流れるので、右肩から離れていく方向になるのが理解できると思います。

それでは、今回の講義は終了です。
一度で理解できなくても、何回か読み直してください。
質問に思うことがあれば、コメントいただければ補足するようにいたします。

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