分かる!Mobitz Ⅱ型 Ⅱ度房室ブロックの心電図

心電図基礎講座
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こんにちは!
今回はついに誰でも知っている有名な不整脈の心電図に入っていきましょう。
じゃ、Wenchebach型かって言われると、心電図がいいのが用意できたらっていう感じです。
結局、他に所見がない分かりやすい心電図を探すってのが一番の難関だったりします。
ということで今回もいってみましょう。

症例: 84歳 女性 失神

あなたが今日は当直で夜間の救急外来で働いていると84歳の女性が失神して頭をぶつけたといって来院されました。来院時の心電図を示します。以前から高血圧症があり、最近、足に浮腫がみられ、少し歩いても息切れを感じるようになったそうです。
下に心電図を示します。

さて、どんな心電図の異常がみられるでしょうか?よく見ると、突然、QRS波が抜けているところがありそうです。P波とQRS波との関係を詳しくみるためにⅡ誘導を拡大してみましょう。

こちらはⅡ誘導を拡大してみました。一つ一つ確認していきましょう。赤い三角形がP波です。P波は上にみえるように一定でちゃんとありそうです。次はQRS波ですが、2回P波とつながった後に突然、消えています。PR間隔に目を移すと、PR間隔は一定で房室結節の伝わり方に問題はなさそうです。

ということで、この心電図はMobitzⅡ型のⅡ度房室ブロックでした。

MobitzⅡ型 Ⅱ度房室ブロックの心電図の特徴

心電図上の特徴はP波は一定間隔でありますが、QRS波が突然、欠落します。PR間隔は一定で延長しません。

Wenchebach(ウェンケバッハ)型Ⅱ度房室ブロックとの鑑別

Ⅱ度房室ブロックでもう一つ覚えなければならないのはWenchebach型の房室ブロックです。並べてみましょう。Mobitz Ⅱ型の房室ブロックはPR間隔が延長せず、突然、QRS波が欠落します。しかし、Wenchebach型の房室ブロックはPR間隔が延長します。

まぁ、この辺りはどこの教科書にも書いてあるでしょう。
実際にはこれだけでは覚えられないですよね。
では、QRS波が突然欠落してしまう理由を考えながら、MorbitzⅡ型の障害される部位などの特徴を学んでいきましょう。

Mobitz Ⅱ型の房室ブロックで障害される部位

Mobitz Ⅱ型 Ⅱ度房室ブロックは通常、房室結節より遠位のヒス束~プルキンエ線維までの間が障害されて起こります。Mobitz Ⅱ型の患者は、左脚ブロックや2枝ブロックなどのもともと他のブロックをもっている多いです。

Mobitz Ⅱ型の房室ブロックは心筋梗塞や線維化、壊死などの不可逆的な障害によって起こります。一方、Wenchebach型房室ブロックでは薬剤や迷走神経刺激、可逆的な虚血によって起こる可逆的な障害です。

25%のMobitzⅡ型房室ブロックではヒス束自体が障害されて起こり、その後に続くQRSの幅が狭いです。一方、75%のMobitzⅡ型の房室ブロックでは、ヒス束より末梢が障害されておこるため、続くQRS波は幅が広いものとなります。

Mobitz Ⅱ型 Ⅱ度房室ブロックの考え方

では、今までの学んだことをまとめながら、MobitzⅡ型房室ブロックをどう考えてみればよいか考えていきましょう。まず、P波とPR間隔は正常であるので、洞房結節や心房、房室結節までの電気の流れに異常はありません。

しかし、His束以降が障害されているので、突然、断線を起こし心室へ電気信号を伝えることが出来ません(QRS波の欠落)。

左脚ブロックや2枝ブロックを先行して持っていた症例などを想像してもらえると分かりやすいですが、残った信号を伝える電気の線(His束(大元)、左脚や右脚)が断線しそうになっていて、電気が通っても何回かに1回はうまく通らない。それだけ、電気の線がすぐにでも切れそうな状態です。

壊れかけた家電製品が何回かに一回は電源が入らない状態を想像してみてください。
学生時代に持っていたデスクトップのパソコンがこれでした。
その後、しばらくして電源がつかなくなりました。
心電図的にいうと、完全房室ブロックになったということでしょうか。

Mobitz Ⅱ型の房室ブロックの臨床における注意点

今までMobitz Ⅱ型の房室ブロックの障害される部位や考え方を学んできた方はすぐに分かると思うのですが、この不整脈は危険な不整脈の一つです。
もちろん、原因となる基礎疾患によって予後は異なりますが、一般的にいって高度な徐脈や完全房室ブロックに移行する可能性があり、突然、脈が落ちて失神したり(アダムス・ストークス発作)、心不全状態になったりと循環動態が悪化するリスクがあります。つまり、障害を受けている電気を伝える線(His束や左脚、右脚など)が完全に切れていしまうリスクがあります。また、突然死のリスクもあります。

また、MobitzⅡ型の不整脈は通常は一過性ではないので、徐脈による症状がある場合にはペースメーカー等の治療が必要になる場合があります。

症例の患者さんに戻りますが、この方は失神を主訴に来院されました。失神の鑑別は多岐にわたり、循環血症量低下などの他の原因を除外しないといけませんが、Mobitz Ⅱ型房室ブロックが来院時の心電図に認められるので心原性失神の可能性が高いです。その場合には、入院の上、ペースメーカーの植え込み術をするか検討する必要があります。

Mobitz Ⅱ型 Ⅱ度房室ブロックの原因

最後にMobitz Ⅱ型房室ブロックの原因について学んでいきましょう。MobitzⅡ型房室ブロックは、前壁中隔梗塞で起こる可能性があり、予後も悪いので注意が必要です(この辺りは心筋梗塞の心電図解説で述べています)。よく、外来で見るのはサルコイドーシスに合併している症例を見かけます。通常、不可逆的な障害によって起こります。

ということで、今回の講義はどうだったでしょうか?
次回の講義も楽しみにしておいてください。ということで。

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